適用の範囲は・・・
自動車損害賠償保障法では、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」(第三条((自動車損害賠償責任))
と定められ、自賠責保険は自動車の「運行」によって「他人」を死傷させ、 加害者が法律上の損害賠償責任を負った場合に支払われる保険と定義されています。
この「運行」、「他人」といった定義が、若干複雑です。 「運行」には、通常の走行の他に、ドアの開閉やクレーン車のクレーン作業なども含まれます。
また、「他人」というくらいだから、運転者本人には適用になりません。
この他にも、「保有者」とは・・・「運転者」とは・・・といった定義の解釈には難しい部分もあります。 しかし、この部分の解釈によって、自賠責の適用にかかわるので、まずは重要な部分となります。
自賠責保険の補償範囲は・・・
自賠責保険は対人賠償の保険で、交通事故での人身事故、人を死傷させた場合にのみ適用される保険です。物損事故は対象になりません。支払基準
補償範囲は、迅速かつ公平に保険金等を支払い被害者救済するために、国土交通大臣および内閣総理大臣により以下のとおり「支払基準」が定められています。
損害の範囲
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支払限度額(被害者1名あたり)
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傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 |
常時介護のとき:最高4,000万円 | ||
随時介護のとき:最高3,000万円 | ||
後遺障害の程度により | ||
第1級:最高3,000万円~第14級:最高75万円 | ||
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人および遺族) | 最高3,000万円 |
死亡するまでの傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
※平成14年4月1日以降発生の事故より実施
この金額は被害者ひとりひとりについての額です。 交通事故で被害者が複数人いた場合い、ひとりひとりにこの額がそれぞれ支払われます。過失割合の適用
任意保険では、被害者に過失があった場合、厳格に過失相殺が行われますが、自賠責保険の場合、被害者救済の立場から厳格な過失相殺は行われず、被害者に重大な過失があった場合にのみ、重過失減額として、支払い限度額から決められた額が減額されます。被害者の過失が、7割未満であれば全額支払われますが、7割以上の場合は減額されます。
被害者の過失
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後遺障害の場合、
死亡の場合 |
障害の場合、
死亡に至るまでの障害の場合 |
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7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上 | 5割減額 |