20140715

主婦の休業損害は・・・?

治療中

専業主婦は「給与」を受け取っていないから「休業損害」の補償はないのでしょうか・・・?

いいえ、専業主婦であっても「主婦業」ができなくなってしまった期間は、「休業損害」が補償されます。

その額は・・・?

自賠責保険の基準では、1日=¥5,700ですが・・・

「休業損害」って・・・


交通事故に遭ってしまって仕事ができない・・・「当然、休業しなければならなかった期間の所得の減少は補償してもらいたい。」もっともな主張です。

交通事故損害賠償では「休業損害」として、これらを補償しています。

サラリーマンであれば、勤務先からの「休業損害証明書」により証明された休業日数、減額された給与額にもとづき、自営業者であれば、事故前年度の所得税確定申告書と診断書の治療日数にもとづき、「休業損害」が算定されます。

では、専業主婦は・・・

家事労働は、金銭換算される!


専業主婦の行う、家事労働は金銭的に評価されます。

これは、最高裁判所が
「家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を上げているのである」と認めています。
(最高裁判判例 昭和50年7月8日 集民115号267頁、 最高裁判判例 昭和49年7月19日 民集28巻5号872頁)

家事労働はいくら・・・?


専業主婦の場合


先にあげた最高裁判例は、女子労働者の平均賃金に相当する財産上の収益をあげるものと判断しています。

つまり、女子労働者の全年齢の平均賃金を基礎として算出されます。

平成23年の賃金センサスのよれば、この金額は、年額¥3,559,0001日あたり、¥9,750です。

兼業主婦の場合


兼業主婦の場合には、家事労働ができないことによる損害と従事する仕事を休業したことによる損害とが発生しますが、双方を合わせて損害賠償請求することは認められず、いずれか高額なほうを請求することとなります。



保険会社の対応は


保険会社は、被害者が主婦の場合、低額であるパートの収入の「休業損害」のみ、または自賠責保険の基準である、1日=¥5,700を提示してくる場合があります。 慎重に対応してください。

ちなみに、最近は「専業主夫」という方もいらっしゃいますが、男性であるからと言って賃金センサスの男性平均とはなりません。



 一人暮らしの場合


家事従事者としての休業損害は認められません。(東京地判平成22年2月9日交民43巻1号123頁)

家事従事者に休業損害が発生するためには、自分以外の第三者に対し家事労働力を提供していることが必要と考えられているようです。

認められる休業期間は・・・


家事労働ができなかった期間ということですが・・・

入院期間:その全部を休業期間と認める 通院期間:受傷内容、受傷部位、治療経過、回復の度合い、家族構成などを総合的に考慮して休業の割合を決定(例:70%を認めるなど)。

現実にどの程度、家事労働に支障が生じたのかは、客観的な指標はなく、被害者の方の自己申告によることになります。通院を怠らずに治療をつづけ、医師の指示に従っていることが必要かと思われます。

なかなか、難しい部分です。

高齢者主婦の場合


専業主婦の家事労働の財産上の収益は、年額¥3,559,0001日あたり、¥9,750です。
しかし、同じ主婦でも、夫と育ち盛りの子供のいる主婦と、子育てを終え夫と2人暮らしの高齢者の主婦とでは家事労働の負担が違ってきます。

基本は、「全年齢」の平均賃金ですが、家事労働の負担が比較的軽い高齢者の主婦では、年齢に応じた賃金センサスを使う場合があります。

  • 全年齢  = 年額¥3,559,000、1日あたり、¥9,750
  • 60~65歳 = 年額¥2,964,200、1日あたり、¥8,121
  • 65~69歳 = 年額¥2,740,500、1日あたり、¥7,508



計算例


専業主婦のAさんは、交通事故に遭って腕を骨折、30日間入院し、その後90日間通院し症状が固定し、自賠責保険で後遺障害12級の認定を受けました。Aさんの家族は、会社員の夫と小学生の男の子の3人家族です。 この場合のAさんの休業損害は・・・

夫と男の子の3人家族であり、Aさんは家事労働者である。

基礎収入額:年額=¥3,559,000、日額=¥9,750

入院による休業損害:¥9,750 × 30日=¥292,500

通院による休業損害 後遺障害等級が認定されているので、傷病の程度は軽いとはいえず、家事に相当の支障が生じたので80%が認められた。
:¥9,750 × 90日 × 80%=¥702,000

休業損害:
入院による休業損害+通院による休業損害=¥292,500+¥702,000=¥994.500

Aさんの休業損害は、¥994.500となります。

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